和歌と俳句

飯田蛇笏

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旅人に遠く唄へり蓴採

合歓かげに舟のけむりや山中湖

鴨足草雨に濁らぬ泉かな

曲江に山かげ澄みて花藻かな

鹿鳴くや酒をさげすむ烽火守

嶋は秋しぐれやすさよ渡り鳥

はつ雁に几帳のかげの色紙かな

ひぐらしの鳴く音にはずす轡かな

蜻蛉や芋の外れの須磨の浪

畠中の秋葉神社や蜻蛉とぶ

松にむれて田の面はとばぬ蜻蛉かな

元旦や前山颪す足袋のさき

門松や雪のあしたの材木屋

餅花や正月さむき屋根の雪

庭訓によるともどちや手毬唄

梅ぬくし養君の弓はじめ

ながき日や洛を中の社寺詣

琵琶の帆に煙霞も末の四月かな

朧夜や本所の火事も噂ぎり

猫の子のなつくいとまや文づかひ

や人遠ければ窓に恋ふ

雛の日や遅く暮れたる山の鐘

久遠寺へ閑な渡しや雉子の声

山越えてきてわたる瀬や柳鮠

たがやして社の花に午餉かな