和歌と俳句

瓜 真桑瓜

初瓜やまだこびりつく花の形 子規

のせて見て団扇に重しまくわ瓜 子規

瓜一ツだけば鳴きやむ赤子かな 子規

涼しさやくるりくるりと冷し瓜 子規

瓜持て片手にまねく子供哉 子規

瓜ぬすむあやしや御身誰やらん 子規

真桑瓜見かけてやすむ床几哉 子規

我はまた山を出羽の初真桑 子規

瓜好きの僧正山を下りけり 子規

吹井戸やぽこりぽこりと真桑瓜 漱石

先生が瓜盗人でおはせしか 虚子

水清く瓜肥えし里に隠れけり 子規

糠味噌に瓜と茄子の契りかな 子規

瓜積んで朝舟著きぬ流れ山 碧梧桐

瓜食うて我も上るや観音寺 碧梧桐

瓜つけし馬も小諸の城下かな 蛇笏

しばしばや人に雨月の瓜畠 蛇笏

牧水
燻りけぶれる昼の日ざしにかきつぐみ瓜をたづねて夏の街いそぐ

牧水
手にとればたなごころより熱かりき昼の市街のみせさきの瓜

牧水
瓜食めばそことしもなく汗滲み昼のやぶ蚊の身をなきめぐる

牧水
ものうしやあまりに瓜をはみたれば身は瓜に似て汗ばみにけり

赤彦
日焼け瓜いくつも下がり明るめり夕焼畠に我も明るき

ぬすびとに夜々の雨月や瓜畠 蛇笏

瓜揉や相透く縁のうすみどり 草城

瓜揉の酢の利き過ぎし月夜かな 草城

そぼ濡れて縞鮮かや真桑瓜 草城

瓜を売る莚に抱きて脛高し 橙黄子

妹瓜を揉むま独りの月夜かな 水巴

音たてて清水あふれをり瓜をどる 

瓜揉や侘び住む事も十五年 淡路女

海女たのし砂に腹這ひ瓜かぢる 野風呂

瓜もみに来る市の音快し 汀女

何もかも瓜まで小さく夢失せき 楸邨

瓜の市ひとの母子を立ちて見る 楸邨

美濃の子と貪る美濃の甜瓜 誓子

子の生れし家なり瓜を刻むかな 誓子

浅漬の瓜に青白噛むひびき 草城

妊りておちつく妻や瓜を揉む 槐太

冷し瓜揺れ別れたる噴き井かな 汀女

老農の喰はず携ふ真桑瓜 誓子

瓜の蔓動物のごと動きをり 虚子

瓜貰ふ太陽の熱さめざるを 誓子

瓜揉や名も無き民の五十年 草城