和歌と俳句

高橋淡路女

やゝ褪せし浴衣着たるも憎からず

病葉の宿とはなりぬ軒すだれ

人にやゝおくれて衣更へにけり

友の死をなげきつゞけつ更衣

さくらんぼふくみ語るやあどけなう

男女の川落ちて流るゝ清水かな

風鈴に何処へも行かず暮しけり

日に焦げし古菅笠や田草取

よその庭目になにじみなき簾かな

病みてより涙もろさよ夏蒲団

尼が旅手提げ一つに夏初め

白扇や若きお僧の落ちつかず

短夜や笹の葉先にとめし露

馬子のさす五月雨傘の破れやう

古袷着かへし栄えもなかりけり

瓜揉や侘び住む事も十五年

うちつけに夜の戸叩く帰省かな

たのみたる雨雲それぬ凌霄花

我が肩の此の頃肥えしかな

面白き世と思ひ住む浴衣かな

川風にそよぐにぎてや夏神楽

子鴉に鳴く声太し親鴉

桐の花散る門遠く掃きにけり