やゝ褪せし浴衣着たるも憎からず
病葉の宿とはなりぬ軒すだれ
人にやゝおくれて衣更へにけり
友の死をなげきつゞけつ更衣
さくらんぼふくみ語るやあどけなう
男女の川落ちて流るゝ清水かな
風鈴に何処へも行かず暮しけり
日に焦げし古菅笠や田草取
よその庭目になにじみなき簾かな
病みてより涙もろさよ夏蒲団
尼が旅手提げ一つに夏初め
白扇や若きお僧の落ちつかず
短夜や笹の葉先にとめし露
馬子のさす五月雨傘の破れやう
古袷着かへし栄えもなかりけり
瓜揉や侘び住む事も十五年
うちつけに夜の戸叩く帰省かな
たのみたる雨雲それぬ凌霄花
我が肩の此の頃肥えし袷かな
面白き世と思ひ住む浴衣かな
川風にそよぐにぎてや夏神楽
子鴉に鳴く声太し親鴉
桐の花散る門遠く掃きにけり