和歌と俳句

初夏

尼が旅手提げ一つに夏初め 淡路女

初夏や撫子地に色を得たり 石鼎

初夏のイルミネーションの銀座かな 石鼎

初夏の和歌の浦とはなりにけり 石鼎

初夏や渡御の神輿のさんらんと 石鼎

初夏の浦の乙女ぞめじさげて 石鼎

初夏やピアノの上のヴアイオリン 石鼎

初夏の三階に見ゆる町の屋根 石鼎

初夏や木がくれにきく鍬の音 泊雲

初夏や人は水飲み馬は草喰み 山頭火

初夏のわれに飽かなき人あはれ 耕衣

どうやらあるけて見あげる雲が初夏 山頭火

空は初夏の、直線が直角にあつまつて変電所 山頭火

初夏の松風に棲む灯かな 月二郎

初夏の嶺小雨に鳶の巣ごもりぬ 蛇笏

初夏の卓朝焼けのして桐咲けり 蛇笏

初夏や杣が留守なる午餉時 石鼎

初夏や透明の温泉あふれ居り 石鼎

初夏は日色ふくみし楓より 石鼎

初夏や煤けすすけし糸車 石鼎

初夏や散りのこりつつ花あしび 石鼎

蕗の葉に日輪躍る初夏は来ぬ 鷹女

脈弱く初夏のひかりに堪へゐたり 誓子

初夏まぶし読みがたきまで書を白む 誓子

初夏の河岸ほろほろと青き瓦斯ともる 誓子

航海燈河港に泊てし初夏の夜も 誓子

楡がくり初夏の厨房朝焼す 蛇笏

アカシヤに衷甸駆る初夏の港路 蛇笏

港は初夏靴のエナメル灯をへる 鷹女

首夏の家英霊還り電車より見られ 波郷

首夏の家朝に深夜に貨車轟き 波郷

繋船に星ちりばめて初夏の闇 蛇笏

初夏の日に手足ひからせ生きむとす 誓子

けふの静臥初夏の繭雲閉ぢわたる 誓子

初夏の手籠に満てし紅蕪 蛇笏

娘がかせぐ初夏の菜園渓向ひ 蛇笏

初夏や寿司巻く方に玉甍 耕衣

初夏の朝の雀斑うつくしき 草城

道の初夏クロームコンタックス重き 草城

八一
はしゐして ものかくかみの いくたびか ひざにみだるる はつなつのかぜ

八一
にはなかの しばにしみたつ はぎのめを ゆりもてわたる はつなつのかぜ

はつなつや女すくなき安田村 耕衣

小諸はや塗りつぶされし初夏の景 立子

新潟の初夏はよろしや佐渡も見え 虚子

初夏をなみポプラ彎りて北海道 蛇笏

何か叫ぶ初夏硬山のてつぺんに 三鬼

懺悔台初夏の外光黄なりけり 秋櫻子

たのしみの有田に入りぬ町は初夏 立子

初夏や責紐釜の肩の張り 悌二郎