和歌と俳句

立夏 夏に入る

持統天皇御製
春過ぎて夏来たるらし白栲の衣干したり天の香具山

基俊
けさかふる蝉の羽衣着てみればたもとに夏はたつにぞありける

恵慶法師
わが宿のそともに立てる楢の葉のしげみに涼む夏は来にけり

芭蕉
夏来てもただひとつ葉の一葉哉

也有
夏たつや衣桁にかわる風の色

子規
妹が着る 水色衣の 衣裏の 薄色見えて 夏は来にけり

晶子
春いにて夏きにけりと手ふるれば玉はしるなり二十五の絃

牧水
真昼の日そらに白みぬ春暮れて夏たちそむる嵐のなかに

牧水
いつしかに春は暮れけりこころまたさびしきままにはつ夏に入る

白秋
春過ぎて 夏来るらし 白妙の ところてんぐさ 取る人のみゆ

牧水
夏立つや四方の岬のうす青みあはれ入海荒れがちにして

彼岸より庭木動かし夏に入る 虚子

夏立つや禿山すかす不浄門 蛇笏

プラタナス夜もみどりなる夏は来ぬ 波郷

汽罐車の煙鋭き夏は来ぬ 誓子

河童の供養句つづる立夏かな 蛇笏

夏が来ぬ新聞を刷る地下鳴れり 誓子

瀧おもて雲おし移る立夏かな 蛇笏

はや夏に入りたる波の高さかな 万太郎

夏立つやいなやに目立つ肩の痩 悌二郎

清閑になれて堆書裡夏来る 風生

絨毯を除れば海より夏来る 誓子

歳時記を愛して夏に入りゆけり 誓子

雨あしの立夏をあらき拓地かな 蛇笏

おそるべき君等の乳房夏来る 三鬼

夏立ちぬいつもそよげる樹の若葉 草城

夏立ちし日の焼鯖の馥郁と 草城

朝の雨あらくて夏に入りにけり 草城

渓の樹の膚ながむれば夏来る 蛇笏

ながめたつ立夏の雲の小神鳴 蛇笏

旅名残り雲のしかかる立夏かな 蛇笏

山ふかむほどに日鮮か夏来る 蛇笏

高台に高嶺のはだへ夏迎ふ 蛇笏

夏来れば夏をちからにホ句の鬼 蛇笏

夏に入る喬樹の太枝見えにけり 蛇笏

山水のはしる母郷の夏来る 蛇笏

俳諧の行住坐臥や夏来る 風生

立夏はや露ののぼれる水辺草 林火