和歌と俳句

若葉

定家
影ひたす水さへ色ぞみどりなるよものこずゑのおなじ若葉に

偶人に目ふさぐ森の若葉哉 言水

佗斎が芦の丸やへ若葉風 才麿

若葉して御めの雫ぬぐはばや 芭蕉

あらたうと青葉若葉の日の光 芭蕉奥の細道

大空も見へて若葉の奥しれず 北枝

それぞれに名乗て出る若葉哉 千代女

不二ひとつうづみ残してわかばかな 蕪村

やどり木の目を覚したる若葉かな 蕪村

窓の燈の梢にのぼる若葉かな 蕪村

金の間の人物云はぬ若葉かな 蕪村

浅間山煙の中の若葉かな 蕪村

絶頂の城たのもしき若葉かな 蕪村

岸根行帆はおそろしき若葉哉 蕪村

をちこちに瀑の音聞く若ばかな 蕪村

谷路行人は小き若葉哉 蕪村

蚊屋を出て奈良を立ちゆく若葉かな 蕪村

朝河の西し東しす若葉哉 蕪村

山に添うて小舟漕行若ばかな 蕪村

たかどのの灯影にしずむ若葉哉 蕪村

般若経読む庄司が宿の若葉哉 蕪村

わかばして浮世に心うつり哉 暁台

雨雲のかき乱し行若葉かな 暁台

西風の若葉をしほるしなへかな 太祇

濃く薄く奥ある色や谷若ば 太祇

嵐して藤あらはるゝわか葉哉 几董

灰汁の水が澄きるわか葉哉 一茶

ざぶざぶと白壁洗ふわか葉哉 一茶

よい程にたばこのしめる若葉哉 一茶

けし炭の庇にかはくわか葉哉 一茶