和歌と俳句

池西言水

砂糖水実や唐土のよしの葛

児つれぬ法の浮世ぞ順の峰

あふひ草かかるや賀茂の牛の角

偶人に目ふさぐ森の若葉

大井河名越のけふや蠅はらひ

手をかけて品のよからぬ茅の輪かな

女神洗濯桶や川社

蝙蝠や星の鼠鳴中の橋

鯉はねて水静也郭公

流れ去る夜やなら茶舟時鳥

炉地下駄の音や梢のかんこ鳥

玉川や栄螺がら鳴諫鼓鳥

牛部屋に昼見る草の

玉虫は掃捨る師の掟かな

ゆふべゆふべ地蔵にすだく藪蚊

毛虫落ちてまま事破る木陰哉

夜鰹の夜声や合す膝鼓

人はいさゆの花折て下戸いぢり

うの花も白し夜半の天河

とかせばや礫ひとつに玉巻葛

来る人に風蘭おろす軒端哉

昼顔や夜盗の里の留主づかひ

花瓜や絃をかしたる琵琶の上

夕顔の中子煮て喰ふ小家哉

枇杷のさね道の行衛やしゆろの帚