和歌と俳句

池西言水

武蔵野や鑓持もどく初尾花

面影の隠逸伝やかた見草

に来て長生つらし土竜

蓼の秋錦と見るらん犬みかど

牛若の膾作れりたでのはな

いなづまやかよふあしたのはらみ稲

きさがたや稲木も網の助枕

稲の花吸はぬを蝶の艶哉

城跡を泣人誰やそばの花

なた豆に借しけり老の水馴竿

蟷螂のすべりていかるふくべ哉

芋の葉の露しばし銀持賤屋哉

天下の冬二たび告ぬ桐火桶

大歳の富士見てくらす隠居かな

はつ時雨舌うつ海胆の味も今

炭売や雪の枝折の都道

此上は袖のあらしやもみ紙子

わる口を書て去けり借ぶすま

瓜小屋も夢なし網代守る男

白砂糖すすふく塵や餅配

大神楽親に添寝の夢もなし

さざん花に囮鳴く日のゆふべかな

且匂う庭や一すね枇杷の花

津和の葉やあられ待えて破れけむ

須磨の苫吾世に成ぬ冬ぼたん