ゆふかぜに蜘も影かる牡丹かな
垣間より隣あやかる牡丹かな
てふてふの夫婦寝あまるぼたん哉
戻りては灯で見る庵のぼたんかな
老の心見る日のながき牡丹かな
おもたさの目にあつまるや更衣
花の香にうしろ見せてや更衣
脱捨の山につもるや更衣
冬からの皺をぬがばや更衣
葉桜の昔忘れてすずみけり
葉桜や眼にたつものは蝶ばかり
葉桜や鳥の朝寝も目にたたず
音なしに風もしのぶや軒あやめ
風よりも雫のものぞ軒あやめ
洛外やとひはしりたる軒あやめ
風さけて入日涼しき菖蒲の日
それぞれに名乗て出る若葉哉
ぬれ色の笠は若葉の雫にて
濯ふ川や蔦の若葉もあゆみ初
晩鐘に雫もちらぬ若葉哉
竹の子やその日のうちにひとり立
竹の子やふみもわからぬ水の上
竹の子や何を踏えて水の上
つばくらもみづからでなし花御堂
蚊屋つりの草もさげてや花御堂