よい耳を借りて行かばや郭公
一こゑは人につまづくほととぎす
起あがる鳥もあるべし子規
あゆみあゆみあとや見らるる木下闇
宮川の筏も神のしげりより
日の脚の道付かへる茂りかな
ひるがほやあぶなき橋に水鏡
ひる顔の行儀に夜は痩にけり
昼かほのおもてはつよし昼の鐘
ことし竹すずむにたらぬ涼み哉
しばらくは風のちからや今年竹
若竹や押合ふくさも添はなれ
風毎に葉を吹出すやことし竹
見おくりはこと葉ばかりや羽ぬけ鳥
ひるは何を思ひふくみて水鶏哉
行あたる様にも鳴てくゐな哉
夢さめてこたへこたへず水鶏哉
塩竃のほそふ立日はあつさかな
我が我を置忘れたるあつさかな
襟巻をとらぬ茄子の暑さかな
蝉の音の秋へこぼれて暑さかな
唐崎もさして暑の日はあつし
あつき日や竹に雀の往来まで
しさりたり寄ても見たりゆりの花
ひとすじに百合はうつむくばかり也