和歌と俳句

加賀千代女

よい耳を借りて行かばや郭公

一こゑは人につまづくほととぎす

起あがる鳥もあるべし子規

あゆみあゆみあとや見らるる木下闇

宮川の筏も神のしげりより

日の脚の道付かへる茂りかな

ひるがほやあぶなき橋に水鏡

ひる顔の行儀に夜は痩にけり

昼かほのおもてはつよし昼の鐘

ことし竹すずむにたらぬ涼み哉

しばらくは風のちからや今年竹

若竹や押合ふくさも添はなれ

風毎に葉を吹出すやことし竹

見おくりはこと葉ばかりや羽ぬけ鳥

ひるは何を思ひふくみて水鶏

行あたる様にも鳴てくゐな哉

夢さめてこたへこたへず水鶏哉

塩竃のほそふ立日はあつさかな

我が我を置忘れたるあつさかな

襟巻をとらぬ茄子の暑さかな

蝉の音の秋へこぼれて暑さかな

唐崎もさして暑の日はあつし

あつき日や竹に雀の往来まで

しさりたり寄ても見たりゆりの花

ひとすじに百合はうつむくばかり也