和歌と俳句

加賀千代女

その中に唯の雲あり初時雨

はつしぐれ何所やら竹の朝朗

はつ時雨見に出た我は残りけり

はつ時雨野にととのふたものは水

まだ鹿の迷ふ道なり初しぐれ

京へ出て目にたつ雲や初時雨

初しぐれ京にはぬれず瀬田の橋

初しぐれ水にしむほど降にけり

初しぐれ風もぬれずに通りけり

晴てから思ひ付けりはつしぐれ

草は寝て根にかへりけり初しぐれ

眺めやる山まで白しはつ時雨

田はもとの地に落付や初時雨

日の脚に追はるる雲や初時雨

柳には雫みじかしはつ時雨

露はまた露とこたえて初しぐれ

初霜や蔦の手につき足につき

茶のはなや此夕暮を咲のばし

茶の花やかかる日脚を咲のばし

茶の花や此朝夕を咲のばし

山茶花や土気はなれて雪のいろ

道くさの草にはおもし大根引

似た事の三つ四つはなし小六月