和歌と俳句

加賀千代女

吹き別れ別れてもちどりかな

吹たびにあたらしうなる千どりかな

淡路島戻る声なき千鳥哉

二つ三つまではよまるるちどり哉

埋火の手にこたへたる衛かな

鷲の目にこぼれものあり川千鳥

そこそこヘ声あゆませてこたつ

我のみに口をつかふてこたつ哉

髪を結ふ手の隙あけてこたつかな

ある程のだてをつくして紙子かな

待暮も曙もなき紙衣かな

着尽してものののぞみを紙子かな

ぬふてから笑ひころぶや長頭巾

夜噺の片手に着する頭巾哉

夏の夜のちぎりおそろし橋の

独り寝のさめて霜夜をさとりけり

戸の外に是非なく置や冬の月

斯人の気に成ものか冬の月

鳥影を葉に見てさびし冬の月

流れても底しつかなり冬の月

物ぬひや夢たたみこむ師走の夜

おされ合ふてころぶ間もなしとしの市

水仙の香も押合ふや年の市

けふばかり背高からばや煤払

あそび尽しことしも翌のない日まで