年の市線香買に出ばやな 芭蕉
鴨一羽帯にはさむやとしの市 涼菟
おされ合ふてころぶ間もなしとしの市 千代女
水仙の香も押合ふや年の市 千代女
牛の背にあられ走るや年の市 也有
年の市何しに出たと人のいふ 一茶
押さるるや年の市人小夜嵐 子規
徴発の馬つづきけり年の市
馬の尻に行きあたりけり年の市 子規
勢ひやひしめく江戸の年の市 漱石
是見よと松提げ帰る年の市 漱石
ぬかるみに踏まれし歯朶や年の市 水巴
手桶提げてこまごまと買ふや年の市 鬼城
二人してこまごまと買ふ年の市 鬼城
ぶらさげて鴨売る辻や年の市 石鼎
さわさわと霰いたりぬ年の市 禅寺洞
宵過ぎの雪となりけり年の市 草城
外し買ふ注連の長さや年の市 石鼎
大松の二もとの闇や年の市 石鼎
青空に鴉羽ひろし年の市 石鼎
草庵に桶を足しけり年の市 喜舟
男やは何買ひに来し年の市 淡路女
明神の鈴鳴り交へり年の市 鷹女
年の市宮師は神輿かざりけり 喜舟
年の市瓦寄進に附きにけり 喜舟
窈窕と吾妹はゆけり歳の市 蛇笏
のぼせたる女の顔や年の市 草城
燈海に天は昏らみて歳の市 蛇笏
マスクせし夫とものいひ年の市 汀女
小春よき相模の国や年の市 石鼎
小さき子を歩ませんとし歳の市 汀女
年の市提灯ひとつ燃えにけり 万太郎
甘酒の老舗はくらし歳の市 秋櫻子
大ベルを吊す入口年の市 青畝