和歌と俳句

岩田涼菟

仙人の珍しからぬ木実かな

蔦の実を馬に喰はすなうつの山

暮わたる空や芭蕉に鐘の音

椽側にさし入る月や蘭の花

蘭の香や袷かかえて椽通り

燃るかと立寄る塚のまんじゆしやげ

身の上を只しほれけり女郎花

名の跡やはなも見せたり鳥甲

ありやうにすはりて青き瓢かな

むかふ日や萱も薄も弁才天

百疋の馬に模様や花すすき

おそろしき鈴鹿もいまや初紅葉

毬栗に関見返るや上路山

人としておやしらずとは冷じや

初鮭や市中を通る浅野川

麦蒔の日は笠寺に静也

唐崎のかたへしぐれて行人か

こがらしの一日吹いて居りにけり

骨髄に通つて清し霜の花

猿飛んで片枝青し雪の松

湯婆から駒の出さうな手つき哉

来かかりて袴ながらや雪まろげ

鴨一羽帯にはさむやとしの市

はち巻を角にむすぶや大根引

羽箒や薬喰して灸催ひ

鬼の豆貴妃が頭痛もなかりけり