江ノ嶋の穴をうなるや秋の夢 嵐雪
むかふ日や萱も薄も弁才天 涼菟
左千夫
年寒く人も乏しき江の島に雨にこもりて一夜ねにけり
寒潮やざうざう岩を落ちる渦 水巴
天つ日や寒潮の光岩屋まで 水巴
初富士や石段下りて稚児ヶ淵 茅舎
江の島のみどりと海岸日傘と 辰之助
病む窓にのぞむ江の島けふ祭 蕪城
寒夜いま弁才天と吾とのみ 誓子
千鳥なく其夜はさむし虎が許 其角
子規
海原は見渡す限り山もなしいづこをさして白帆ゆくらん
名月やどちらを見ても松許り 子規
大磯でとまらぬ汽車や虎が雨 万太郎
大磯の山いと青く虎が雨 万太郎
地福寺は山を負ふ寺さるすべり 万太郎
藤村忌百日紅の燃ゆるかに 万太郎
新古今集 西行
心なき身にもあはれは知られけり鴫たつ澤の秋の夕ぐれ
春雨や傘さしつれし浜社 白雄