和歌と俳句

川崎

徒歩で行く大師詣や梨の花 子規

朝霧の雫するなり大師堂 子規

咲くや大師の堂の普請小屋 子規

川崎を汽車で通るや帰り花 子規

新涼の月こそかかれ槇柱 虚子

御籤吉冬至のお庭あたたかに 青邨

横浜

稲塚のとつかにつづく田守哉 其角

夕風に外人の墓いよいよ白かり 山頭火

明け易き波間に船の仮泊かな 蛇笏

茂吉
横浜の 港にかたまれる 腹あかき 船舶にしばし 視線をあつむ

ばら薫るマーブルの碑に哀詩あり 久女

花曇昨日の船の今日は無き 汀女

起重機の見えて暮しぬ釣荵 汀女

街の上にマスト見えゐる薄暑かな 汀女

さみだれや船がおくるる電話など 汀女

朝曇港日あたるひとところ 汀女

晩涼や運河の波のややあらく 汀女

噴水の玉とびちがふ五月かな 汀女

子供等の英語の窓の花葵 汀女

屋根の上の異国の旗や雲の峰 汀女

夕立や船影白くかき消つつ 汀女

船蟲に忽然としてヨツトかな 汀女

横浜にすみなれ夜ごと夜霧かな 汀女

異人墓地木梢の海も雪ぐもる 三鬼

異人墓地花束にうもれたる 三鬼

異人墓地十字架雪をよそほへる 三鬼

異人墓地雪の糸杉かがよへる 三鬼

異人墓地雪むらさきに夕づける 三鬼

泊つる船みな街へ向く園落葉 不死男

夜の落葉港埠にきたり靴ひびき 不死男

寐にかへる船のマドロスに落葉降る 不死男

草枯れて港埠の鉄路柵を置かず 不死男

海港のくらさも蓋し台風期 悌二郎

レーダーに応ふる船や菊日和 汀女

枯枝に春雨雫結びては 立子

北風吹くや月あきらかに港の灯 久女

行く年の湾にただよふ荒筵 不死男

航跡の白さささくれさへ冴ゆる 不死男

たらたら飛ぶ港所有の冬鴎 不死男

外人墓地浄く荒れをり秋の蝉 悌二郎

金沢八景

八景の絵府にいそぐや越の 支考

八景のうちふたつみつしぐれけり 也有

昔ここ六浦とよばれ汐干狩 虚子