和歌と俳句

円覚寺

冷やかな鐘をつきけり円覚寺 漱石

晶子
うらさびし 円覚寺にて 摘みし花 かざせしままに 君と歩めば

だんだんと星明らかにしげし 立子

坊々に犬を飼ひをり萩の花 立子

梅もつて僧かへりきぬ円覚寺 立子

杉の秀に炎天澄めり円覚寺 茅舎

避暑人の住み交りをり圓覺寺 たかし

一院のに終始すたたずまひ たかし

廟の扉を花に押し開け時宗忌 たかし

花人のこの廟所まで来るは稀 たかし

久々に家を出づれば春の泥 虚子

たつぴつに雲水をつぎくるゝ 万太郎

雲水のつぎくれし炭熾りけり 万太郎

耳のはたで鐘つかれたり年の暮 万太郎

大根まだ干す寺に年忘れけり 万太郎

雲水の草鞋すがしと牡丹咲く 秋櫻子

雲水の牡丹まぶしむ笠のうち 秋櫻子

まづ以て落花の池を円覚寺 万太郎

滴りの正しく太く岩濡らす 汀女

蟻が食ふ蛾がきらきらと円覚寺 楸邨