鬼灯のはでな著物や秋扇
秋雨や癒ゆべくもなき旅づかれ
屋上の舟のやうなる月見かな
雨の糸ときどき見ゆる芒かな
ときどきの鶏の羽音や秋の雨
稲架かげにしばらく見えず渡り鳥
稲架かげとなりつゝ渡り鳥遠く
漸くに秋雨毎の寒さかな
鵙日和椢林にくぐり入る
もたれ坐す楢の細木や鵙日和
楡の木に山鳩来ねば四十雀
楡の木にもれなく著きぬ四十雀
草じらみおのがもすそをかへり見し
稲掛けて人の如くに松立てり
将棋見る鰯車をおしとゞめ
稲こきの男見えきし淡路島
うち立てし七夕竹の低かりし
子の摘める秋七草の茎短か
摘みゆくや秋七草に猫じやらし
ぱらぱらと穂芒はねて潔し
月の歯の欠けてうすさよ八日月
秋雨の池の面ばかり騒がしや
雨やんで野分の庭に一家族
胸はりて野分に鳩のたゆるさま