賑やかに障子開けたり十三夜
灯の下に生けたる菊の残り花
秋晴に障子しめありたかし庵
とゝのはぬ昼餉もどかし鯊の宿
秋晴や町中にある舟だまり
出来てゆく菊人形の裳かな
鵯の何かくはへて大銀杏
鵯鵯の落せし木の実見にゆきぬ
白きもの振りゐる見ゆる紅葉山
萩の枝にかゝりてたわむ萩の枝
光りゐるこまかき露や萩の上
三つ三つと花咲いてゐる吾亦紅
藤棚に月よく動く初嵐
朝顔のしぼみし花の葉に沈み
地にとまる蜻蛉かならず日向かな
水あげのおそき花かな吾亦紅
手花火に手をさしのべし影法師
もうやまぬ雨となりたる月見かな
岸に著く雨月の船のなつかしく
沢山に雨月の船の止りゐる
子の持てる薄はなはだ太かりし
秋草を生けてひとすぢ葉垂るゝ
空の色だんだん変る萩の花
こまごまと萩の色なる枝のさき
花芒はらりと解けし如くなり