和歌と俳句

吾亦紅 われもこう

藤原季通
野辺ごとに 人もゆるさぬ 吾亦紅 こや今様の 武者の言草

此秋もわれもかうよと見て過ぎぬ 白雄

何ともな芒がもとの吾亦紅 子規

路岐して何れか是なるわれもかう 漱石

憲吉
手はわれは握るとしつつ気をつきぬ道にゆれたる我毛香かな

晶子
あるが中に恋の涙のわれもかうわれの涙の野のわれもかう

叢や吾亦紅咲く天気合ひ 蛇笏

さしそへて淋しき花の吾亦紅 鷹女

三つ三つと花咲いてゐる吾亦紅 立子

水あげのおそき花かな吾亦紅 立子

いつか失せぬ手折り持ちゐし吾亦紅 立子

拾ひたる石に色あり吾亦紅 かな女

吾亦紅つくりぼくろのかの人の 青邨

吾亦紅霧が山越す音ならむ 悌二郎

吾も亦紅なりとついと出で 虚子

手折る花いつしか多し吾亦紅 汀女

高原の霧が梳き過ぎ吾亦紅 立子

霧の中おのが身細き吾亦紅 多佳子

ひとの子を濃霧にかへす吾亦紅 多佳子

吾亦紅壮んなる時過ぎて立つ 誓子

吾亦紅真紅なるとき銃の音 誓子

吾亦紅立つて野の川混濁す 誓子

吾亦紅くらし指す人もまた 普羅

浅間越す人より高し吾亦紅 普羅

吾亦紅枯首あげて霧に立つ 普羅

瀬しぶきにうつろふ霧や吾亦紅 蛇笏

吾亦紅夕べは鵙のふくみ音に 鷹女

吾亦紅淡路女の忌の遠く近し みどり女

籐椅子の脚にも媚びて吾亦紅 風生

山裾のありなしの日や吾亦紅 蛇笏

吾亦紅はづみて霧のしづまらず 青畝