和歌と俳句

良夜

どこやらに花火のあがる良夜かな 虚子

筆硯に多少のちりも良夜かな 蛇笏

芋の葉影土に蒐まれる良夜かな 泊雲

入相の鐘のあとなる良夜かな 青畝

近よりて紫苑色なき良夜かな 播水

垣外のよその話も良夜かな 風生

葛飾は早稲の香にある良夜かな 秋櫻子

ふくろふの口ごもり鳴ける良夜かな 秋櫻子

五位鷺の森さわがしき良夜かな 秋櫻子

ひらかるゝ窓のひかりし良夜かな 草城

せゝらぎは殊にさゞめく良夜かな 泊雲

人それぞれ書を読んでゐる良夜かな 青邨

老杉の髪のごとくに良夜かな 茅舎

高原の薄みじかき良夜かな たかし

山畑に霧一抹の良夜かな たかし

山に彳ち山山見つる良夜かな たかし

山山を統べて富士見る良夜かな たかし

まだ十時すこしまへなる良夜かな 万太郎

仏の灯浴びて良夜のあるじかな 麦南

埼々の法螺吹きならす良夜かな 鳳作

甃硯のごとき良夜かな 茅舎

落葉松は良夜の湖をかくし得ず 青畝

白かりし良夜の土の欺けり 誓子

良夜の樹西方よりの月に照る 誓子