和歌と俳句

高浜虚子

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此月の満れば盆の月夜かな

我村や月束嶺を出て孤なり

高原や粟の不作に蕎麦の出来

九月盡日、許六拜去来先生几下

秋風に焼けたる町や湖のほとり

灯火の穂に秋風の見ゆるかな

灯ともれる障子ぬらすや秋の雨

石の上の埃に降るや秋の雨

裸火を抱く袖明し秋の雨

秋雨や身をちぢめたる傘の下

秋雨の雪に間近き山家かな

南天の実太し鳥の嘴に

紅葉客熊の平にどかと下りぬ

濡縁に雨の後なる一葉かな

蜻蛉は亡くなり終んぬ鶏頭花

秋風や最善の力ただ尽す

一人の強者唯出よ秋の風

葡萄の種吐き出して事を決しけり

降り出せし雨に人無し葡萄園

葡萄口に含んで思ふ事遠し

ただ一人いつまで稲を刈る人ぞ