和歌と俳句

高浜虚子

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明治26年

故郷は昔ながらのかな

明治27年

信濃路や蠶飼の檐端菖蒲葺く

旅の夜の菖蒲湯ぬるき宿りかな

人行かぬ旧道せまし茨の花

短夜の闇に聳ゆる碓氷かな

短夜の山の低さや枕許

短夜の星が飛ぶなり顔の上

木曽に入りて十里は来たり栗の花

五月雨の和田の古道馬もなし

五月雨の夕雲早し木曽の里

五月雨や檜の山の水の音

蝸牛葉裏に雨の三日ほど

松竝木美濃路大いなり

恐ろしき峠にかかるかな

住みなれし宿なればもおもしろや

子規鳴く頃寒し浅間山

家二軒笠取山の時鳥

子規鳴き過ぐ雲や瀧の上

ほととぎす月上弦の美濃路行く

大粒の雨になりけりほととぎす

十抱への椎の木もあり夏木立

ひしひしと黒門の夏木立かな

傘さして行く人を見る夕立かな

夏山の小村の夕静かなり

木曽深し夏の山家の夕行燈

木曽を出れば夏山丸く裾長し

大紅蓮大白蓮の夜明かな