和歌と俳句

夏の山

貫之
夏山の かげをしげみや たまほこの 道ゆき人も たちとまるらむ

夏山に足駄をおがむ首途哉 芭蕉

夏山や通ひなれたる若狭人 蕪村

夏山やうちかたぶいてろくろ引く 蕪村

夏山や尽し飛ぶ鷺ひとつ 蕪村

夏の山しづかに鳥の鳴音哉 召波

夏山の洗ふたやうな日の出哉 一茶

夏山や一足づつに海見ゆる 一茶

夏山や一人きげんの女郎花 一茶

夏山をめぐりて遠し道普請 子規

夏山を廊下づたひの温泉哉 子規

夏山や雲湧いて石横はる 子規

夏山や万象青く橋赤し 子規

夏山や岩あらはれて乱麻皺 子規

夏山の小村の夕静かなり 虚子

木曽深し夏の山家の夕行燈 虚子

木曽を出れば夏山丸く裾長し 虚子

夏山や空は小暗き嵐雲 龍之介

夏山や空はむら立つ嵐雲 龍之介

夏山や松を襲へる嵐雲 龍之介

江の空や拳程なる夏の山 龍之介

夏山や幾重かさなる夕明り 龍之介

夏山や峯も空なる夕明り 龍之介

夏山やうす日のあたる一ところ 龍之介

倒れ木も多し百合咲く夏の山 碧梧桐

石段に根笹はえけり夏の山 鬼城

夏山や鍋釜つけて湯治馬 鬼城

夏山や二階なりける杣の宿 普羅

夏山や急雨すずしく書にそそぐ 蛇笏

夏山や又大川にめぐりあふ 蛇笏

夏山や音の死たる淵を見る 喜舟

夏山や吊橋かけて飛騨に入る 普羅

夏山や風雨に越える身の一つ 蛇笏