和歌と俳句

月見草 待宵草

利玄
からみあふ花びらほどくたまゆらにほのかに揺るる月見草かな


日は見えてそぼふる雨に霧る濱の草に折り行く月見草の花

牧水
君が背戸や暗よりいでてほの白み月のなかなる花月見草

牧水
月見草 見ゐつつ居れば わかれ来し 妻が物思ふ すがたしぬばゆ

牧水
青草の なかにまじりて 月見草 ひともと咲くを あはれみて摘む

牧水
あめつちにわが跫音のみ満ちわたる夕さまよひに月見草摘む

晶子
月見草花のしをれし原行けば日のなきがらを踏むここちする

晶子
花引きて一たび嗅げばおとろへぬ少女ごころの月見草かな

晶子
大和川砂にわたせる板橋を遠くおもへと月見草咲く

月見草いたる処に萎れけり 喜舟

白秋
河土手に蛍の臭ひすずろなれど朝間はさびし月見草の花

晶子
月見草雨に濡るるがいたげやと庭を見さして夕より寝し

月あらぬ空の澄みやう月見草 亜浪

晶子
昨夜の花をととひの花露に濡れあしたにそよぐ月見草かな

晶子
月見草雨ののちなる山松のしづく散るなり黄にひらく時

晶子
やごとなき御仏たちに供へたる火皿と見ゆる月見草かな

北斗露の如し咲きすむ月見草 水巴

牧水
暑かりしひと日は暮れて庭草の埃しづもり月見草咲けり

八一
あめはれしきりのしたばにぬれそぼつあしたのかどのつきみそうかな

月見草の明るさの明方は深し 碧梧桐

月見草はなればなれに夜明けたり 水巴

光りとぶ宵の蛙や月見草 石鼎

月見草やがてたゝずむそちこちに 爽雨

夕潮に纜張りぬ月見草 播水

唯一人船繋ぐ人や月見草 虚子

夜振火に浮みいでたり月見草 草城

猛犬の女あろじや月見草 播水