和歌と俳句

祇園祭

月鉾や兒の額の薄粧 曾良

祇園會や真葛原の風かほる 蕪村

ぎおん会や僧の訪よる梶が許 蕪村

かしこくも鞨鼓学びぬ鉾の児 召波

祇園会に曳や手摩ヅ乳あしなづち 召波

鉾処々にゆふ風そよぐ囃子哉 太祇


祇園会や錦の上に京の月 子規

祇園会や二階に顔のうづ高き 子規

祇園会や万燈たてて草の中 鬼城

姫宮と襖さかひに鉾を観る 静塔

舟鉾の螺鈿の梶があらはれぬ 静塔

ゆくもまたかへるも祇園囃子の中 多佳子

われもまたゆきてまぎれん祇園囃子の中 多佳子

髪白く笛息ふかきまつりびと 多佳子

鉾囃子高く暗きに笛吹く群れ 多佳子

祭笛吹とき男佳かりける 多佳子

祇園会や女ざかりの汗見事 草城

南北の夜の通風に祇園囃子 誓子

高鉾に揺れつつ笛を吹きやめず 誓子

長刀鉾刃に空を截りすすむ 誓子

ぎしぎしと船鉾軋む陸行きて 誓子

地を歩く鉾の高きにゐし人等 誓子

鉾下りて歩み来れる稚児に会ふ 誓子

白炎天鉾の切尖深く許し 多佳子

太鼓の音とびだす祇園囃子より 多佳子

鉾の稚児袖あげ舞ひて衣装勝ち 多佳子

炎天の眼に漲りて鉾の紅 多佳子

地車止り祗園囃子のとどこほる 多佳子

鉾曲る前輪ぎぎと梃子を噛み 多佳子

鉾過ぎし炎天架線工夫吊り 多佳子

帰り山車走せて徒足脛揃ひ 多佳子

紫の裾濃の几帳祇園祭 誓子

鉾にゐて稚児の眼あらぬ方を見る 誓子

船鉾の黒塗の舵水を切る 誓子

祇園会に絵硝子欠けて窓ひらく 静塔

揺籃の時より鉾を見続けて 静塔

屋根方を乗せ月鉾の又びびる 静塔

鉾ゆれて稚児人形も揺れる辞儀 静塔

骨として鉾をほぐせし紐の数 静塔