和歌と俳句

橋本多佳子

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天ちかき高野の轍黍芽立つ

雪嶺と童女五月高野のかがやけり

八つ嶽に雪牡丹に雨のふりそそぐ

五月空真白くのぞき木曾の駒嶽

雪嶺の赤恵那として夕日中

高鳴つて鵜の瀬暮るるに遅れたり

友鵜舟焔危し瀬に乗りて

かうかうと身しぼる叱咤鵜の匠

索かるるもまた安からむ手縄の鵜

彼方にて焔はげしき友鵜舟

一切の混沌青嵐矢つぎばや

蜘蛛の囲の蝶がもがくに蝶が寄る

湧きあふる歓喜は静かならず

泰山木ひらき即ち古びに入る

沙羅双樹ぬかづくにあらず花拾ふ

沙羅落花傷を無視してその白視る

沙羅双樹茂蔭肩身容れるほど

夏行秘苑僧の生身のねむたげに

草あらし香を奪はれて百合おとろふ

囲の蝶のもがきに蜘蛛のともゆれる

菖蒲園かがむうしろも花暮れて

白炎天の切尖深く許し

太鼓の音とびだす祇園囃子より

の稚児袖あげ舞ひて衣装勝ち

炎天の眼に漲りての紅