和歌と俳句

橋本多佳子

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日を射よと草矢もつ子をそそのかす

日を射つて草やつぎつぎ失へり

枝にあるをとめの脚や枇杷をもぐ

枇杷を吸ふをとめまぶしき顔をする

牛飼のわが友五月来りけり

新し田にてをとめの濡れとほる

八方へゆきたし青田の中に立つ

炎天に松の香はげし斧うつたび

炎天の梯子昏きにかつぎ入る

薔薇色の雲の峰より郵便夫

暑の中に吾をうつさず鏡立つ

爪立てども切れたるのつながれず

ゆくもまたかへるも祇園囃子の中

われもまたゆきてまぎれん祇園囃子の中

髪白く笛息ふかきまつりびと

鉾囃子高くくらきに笛吹く群れ

祭笛吹とき男佳かりける

祭笛うしろ姿のひた吹ける

生き堪へ身に沁むばかり藍浴衣

歎きゐて濃き刻を逸したり

咳しつつ遠賀の蘆原旅ゆけり

青蘆原をんなの一生透きとほる

水底の明るさ目高みごもれり

葭雀松をつかみて啼きつづくる