和歌と俳句

葭雀 よしきり 行々子

水車場へ小走りに用よし雀 虚子

風来る葭切啼ける行手より 誓子

いつぽんの道葭切と電柱と 誓子

葭切や友その妻を率てきたる 

水車の音きき足早め葭雀 立子

よしきりや雨にぬれたるものばかり 万太郎

葭切や蔵書のみなる教師の死 林火

葭切がかぼそき電話線つかむ 静塔

葭切や竝び静もる釣人に たかし

死ぬること独りは淋し行々子 鷹女

葭切や未来永劫ここは沼 鷹女

葭雀松をつかみて啼きつづくる 多佳子

葭切や潮の早瀬に一漁村 秋櫻子

葭切や建てつつ窓を備へつつ 草田男

葭雀饒舌つくす蹶速塚 秋櫻子

葭雀泳ぎ女の衣嵩もなし 波郷

葭切尚ほ鳴く「死は与ふ眠は与へず」と 草田男

ゆるやかな千曲の側の葭雀 誓子

雷魚をり見よとてさわぐ葭雀 秋櫻子

葭切高音釘打つ音も拍手も 草田男

発動船の心音去来行々子 草田男

葭切のなびき遅れし葭にをり 秋櫻子

葭切や石棺しづむ浦の波 秋櫻子

葭切や人はレールの砂利を搗く 不死男

葭切や奥の細道雲を笠 静塔

水馴棹にて葭切を叱りつけ 静塔

葭切や熱きアルミに熱き白湯 静塔

富士ぐもり葭切は舌使ふ声 不死男

葭切や我が行きて道みな残る 耕衣