和歌と俳句

紅の花

万葉集巻十
外のみに見つつ恋ひなむ紅の末摘花の色に出でずとも

万葉集巻十一
紅の花にしあらば衣手に染めつけ持ちて行くべく思ほゆ

古今集・恋 よみ人しらず
人しれず思へばくるし 紅のすゑつむ花の 色にいでなむ

源氏物語・末摘花
なつかしき色ともなしに何にこの末摘花を袖に触れけん

式子内親王
我が袖のぬるるばかりは包みしに末摘花はいかさまにせむ

芭蕉(奥の細道・尾花沢)
まゆはきを俤にして紅粉の花

何に此末摘花を老の伊達 支考

手を覆ふやうな曇や紅粉の花 涼菟

こぼれてはもとの水なり紅の花 千代女

ふみそむる鹿の子の道や紅の花 千代女

九重の水もまばゆし紅の花 千代女

短夜のつのる花かや紅ばたけ 千代女

涼風のはいりて見えぬ紅畠 千代女

願かけて観音様へ紅の花 漱石

打水やずんずん生くる紅の花 しづの女

母の日の五月つごもり紅粉の花 青邨

紅粉の花おはんの使来れば剪る 青邨