和歌と俳句

夏の川

月の頃は寐に行夏の川辺哉 杉風

夏川やつたいありきつ里の背戸 北枝

夏河を越すうれしさよ手に草履 蕪村

夏川や水の中なる立咄し 子規

晶子
鵜松明天と蘆間と水ぞこに星ぞいざよふ夏の川かな

夏川や砂さだめなき流れ筋 蛇笏

馬に乗つて河童遊ぶや夏の川 鬼城

夏の川灯影ちぢらせ汪洋と 播水

夏川や榎をかぶる渡船小屋 風生

夏川の流材濁りし光りかな 橙黄子

夏川や一つ瀬やがて二た流れ 石鼎

夏川をかちわたり見る磨崖仏 播水

夏の川汽車の車輪の下に鳴る 誓子

多摩郡夏川峡をながれいづ 秋櫻子

茶屋の裏紺青にして夏の川 青畝

よべのまま夜明けし窓や夏の川 石鼎

夏の河赤き鉄鎖のはし浸る 誓子

夏の河橋梁に汽笛を吹きすすむ 誓子

夏の河北せり車両わたり終ふ 誓子

夏川の淵の砂浜あはれなる 誓子

夏川の声ともならず夕迫る 龍太

夏川のみどりはしりて林檎の国 龍太

淡路小国夏川の磧荒れ 誓子

電球が浮いて憚る夏の河 不死男