和歌と俳句

飯田蛇笏

前のページ<< >>次のページ

こころよき炭火のさまや三ケ日

ゆく秋やかかしの袖の草虱

とりいでてもろき錦や月の秋

はつ嵐真帆の茜に凪ぎにけり

琴の音や芭蕉すなはち初嵐

炊ぎつつながむる山やの音

落し水鳴る洞ありて吸ひにけり

はつ汐にものの屑なる漁舟かな

秋川や駅にまがりて船だまり

酒肆を出て蘆荻に橋や秋の川

秋海のみどりを吐ける鳴戸かな

茄子畑に妻が見る帆や秋の海

秋海のなぎさづたひに巨帆かな

くれなゐのこころの闇の冬日かな

爐開きのほそき煙りや小倉山

住吉の道のべの宿や爐をひらく

高浪に千鳥帯とてつづきけり

汐くみにきて遠冨士にちどりかな

みづどりにさむきこころをおほひけり