和歌と俳句

飯田蛇笏

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踏切の灯を見る窓の深雪かな

なつかしやの電車の近衛兵

ふるさとの雪に我ある大爐かな

草枯や又國越ゆる鶴のむれ

草枯や野邊ゆく人に市の音

阿武隈の蘆萩に瀕す冬木かな

山茶花や日南のものに杵埃り

茶の花も菅笠もさびし一人旅

絵馬堂の内日のぬくき落葉かな

立春や梵鐘へ貼る札の数

ゆく春や流人に遠き雲の雁

ゆく春の人に巨帆や瀬多の橋

行春や朱にそむ青の机掛

残雪や中仙道の茶屋に谷

木戸出るや草山裾の春の川

薪水のいとまの釣や春の水

古き世の火の色うごく野焼かな

人々の坐におく笠や西行忌

林沼の日の静かさや花あざみ

ひえびえと鵜川の月の巌かな

古宿や青簾のそとの花ざくろ

行水の裸に麦の夕日影

行水のあとの大雨や花樗

鮎鮓や多摩の晩夏もひまな茶屋

囮鮎ながして水のあな清し