和歌と俳句

蓮の花

黒谷の松や蓮さく朝嵐 碧梧桐

黎明の雨はらはらと蓮の花 虚子

水泡の相寄れば消ゆ蓮の花 鬼城

白秋
蓮の花 持て来よと云へば その茎もぎり 花だけを持て来 この童は

白秋
日の下に 背伸しつつも 両掌にのせ 白蓮の花を ささげたり子は

松風に咲きつくしけり神の蓮 泊雲

赤彦
曇天の 池一ぱいに 蓮の葉立ち 揺れもこそせね 紅のはちす

赤彦
ぽつかりと 朝の曇りに 花ひらく 紅蓮華こそ 大きかりけれ

赤彦
咲き満てる 蓮の花の 曇り久し 上野山より 鐘鳴り響く

牧水
雨よべる 風なるらしも 朝空に 雲のみだれて 白蓮さけり

牧水
いまは早や こぼれむとする くれなゐの 蓮の花あはれ くもり日のもとに

暁闇を弾いて蓮の白さかな 龍之介

天竺に女人あまたや蓮の花 龍之介

夕立の来べき空なり蓮の花 龍之介

白うさいてきのふけふなき蓮かな 水巴

蓮咲くや今朝の大鐘まだ鳴らず 石鼎

僧二人ともに酔ひ居る蓮かな 石鼎

蓮散つて真青き茎や葉の中に 泊雲

蓮池や花影見えて隙間水 花蓑

蓮を見る籬の外の街の音 風生

白蓮やはじけのこりて一二片 蛇笏

干し草もしめつてゐるや蓮の花 龍之介

蓮の葉押しわけて出て咲いた花の朝だ 放哉

べにはすや日闌けし水に悩ましき 草城

蓮咲くや旭まだ頬に暑からず 久女

水暗し葉をぬきん出て大蓮華 久女

遠雷や咲き聳えたる蓮の花 播水