和歌と俳句

若山牧水

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朝床の 枕のうへに ながれ入る 椋の葉の風 雨よぶらしも

けふもまた 明けにけるかな 軒端なる 椋の青葉に 風は見えつつ

椋の葉の 風は流れて 朝床の わが眼わが手の 萎えしに吹く

朝起きの 萎えごころか 椋の葉に うごける風を 見ればいとはし

さわさわに 朝風吹けば 深みどり 椋はそびえて 大空曇る

夏草の なびける山に 真向ひて 今朝をさびしく 歩み居るかな

砂みちの 砂のほこりの 今朝立たず ゆく手にほそき 苗代田見ゆ

浪の音 今朝は凪ぎたれ 坂みちの 木がくれにして 聞けば凪ぎたれ

麻の葉の 茂りさびしも 砂畑の くろの細みち ゆけば袖濡る

麻にいつ 花咲くものぞ 茂り葉の 青きがままの 夏のしののめ

しぶしぶと 顔洗ひをれば 真青に 梅雨の朝日の 落ちて来にけり

梅雨雲の 垂れに垂れつつ ひさかたの 空の隅より 朝日子させり

砂浜の 浜ひるがほの しよんぼりと 咲けるこころか 涙ながるる

めづらしく 妻をいとしく 子をいとしく おもはるる日の 昼顔の花

夏草の 茂りの上に あらはれて 風になびける 山百合の花

夏山の 風のさびしさ 百合の花 さがしてのぼる 前にうしろに

折りとれば われより高き 山百合の 青葉がくれの 大白蕾

たわたわに 蕾ばかりが 垂れゐつつ この山百合の 長し真青し

山百合の 花のひとたば さげ持ちて 都へのぼる 友に逢はむため