燈置けば百合本箱に映りけり 石鼎
白秋
深深と人間笑ふ聲すなり谷いちめんの白百合の花
山百合にねむれる馬や靄の中 蛇笏
山影の落つる水辺や百合の花 石鼎
谷水に垂れて白しや月の百合 石鼎
白百合の花大きさや八重葎 鬼城
牧水
夏草の 茂りの上に あらはれて 風になびける 山百合の花
牧水
夏山の 風のさびしさ 百合の花 さがしてのぼる 前にうしろに
牧水
折りとれば われより高き 山百合の 青葉がくれの 大白蕾
牧水
たわたわに 蕾ばかりが 垂れゐつつ この山百合の 長し真青し
牧水
山百合の 花のひとたば さげ持ちて 都へのぼる 友に逢はむため
店番まいにちほつかりと百合が開いたり 山頭火
夜のふかさの百合の香のいよいよふかく 山頭火
白百合の水にのぞみて大きさよ 櫻坡子
花百合や隣羨む簾越し 龍之介
晶子
低き木の柵めく門の内側の精進ホテルの山百合の花
百合折りぬやがてぞ捨てぬ水に沿ひ 虚子
書斎兼寝室机上百合一輪 播水
谷風や花百合そ向きま向きして 青畝
百合の蕊皆りんりんとふるひけり 茅舎
百合赤し夕立晴れし草の中 秋櫻子
白百合の芳芬を聞く静こころ 草城
卓の百合眞向き匂ふ鼻の先 草城
貧しき群におちし心や百合に恥ず 久女