和歌と俳句

百合

まなかひの白百合かをる小午餐かな 草城

白百合や袴をつけて庵主あり播水

風吹けば白百合草を躍り出づ 青邨

山百合の大いなる花軒の端に 青邨

百合さすや地獄廻りの駕の中 喜舟

見おぼえの山百合けふは風雨かな 立子

ひらいてゆれてゐる鬼百合のほこり 山頭火

家がとぎれると水音の山百合 山頭火

断崖に勿来の濱は百合多し 秋櫻子

百合咲けばお地蔵さまにも百合の花 山頭火

山百合の見ゆるほどなる山遠さ 立子

雨の日々百合のさかりも過ぎにしや 立子

草深く山百合咲きて現れし 立子

雨急や車窓締む間の百合の香を 立子

頂上の百合そちこちと立ちあがり 青畝

薬草を乾して牧舎の百合咲けり 

草山の吹き騒げども百合静か 立子

百合咲きて山あちこちと立ち並び 立子

風落ちて谷底の百合動く見ゆ たかし

起ち上がる風の百合あり草の中 たかし

草山に浮き沈みつつ風の百合 たかし

山風のおさまれば百合草に起ち みどり女

逆に干す大洋傘や庭の百合 石鼎

下をゆくぱらそるみゆれ庭の百合 石鼎

蕗畑は籾だらけにて百合の宿 石鼎

百合匂ひ看護婦は死の髪を梳く 多佳子

母に遺す一高の帽白き百合 多佳子

機首掠め断崖の百合を鋭く立たす 不死男

照り潮やためともゆりは丘に咲き 林火

風の百合雌蕊受粉のよろこびを 麦南

山百合を押し立てゝ出し湯郷かな かな女

草中に鎌倉百合は真赤かな 立子

頸あをき少年と対す百合の前 波郷

巨き百合なり冷房の中心に 三鬼

百合匂ふ机にありて夜もすがら 占魚

無名戦士大き石となり百合匂ふ 青邨

母子ホーム出窓の百合も雨ぐもり 友二

百合の香に一とまどろみの淡き夢 花蓑

提げゆきし百合の香ここにとどまれる 誓子

息の中白百合の香の深みゆく 知世子

石を撫し傍らにある百合を剪る 虚子