打ち据ゑし火蛾の眼の爛々と
蜩や水上遠く歩を返す
蚤飛んで葵の花にまぎれけり
月光に聳りたちたる新樹かな
新樹よりこぼるる花のごときもの
椎落花風に吹かれてころころと
夕ぐれや藪も青田も雨のあと
青蘆や川のなかばはえりの領
桑籠を童ころがし下り来る
山川のある日濁りぬ葛の花
白百合や袴をつけて庵主あり
吹かれ来し蝶に青芦かぎりなく
葭雀葭すれずれに飛びうつる
早乙女の漕ぎ戻りくる舟にあふ
萍の中の舟路岐れをり
休らうや艫も舳も蓮の中
禁猟の古びし札や蓮の中