和歌と俳句

火取虫 蛾

宵闇や殺せどもくる灯取虫 龍之介

谷幾つ越え来て此処に火取虫 龍之介

上人の俳諧の灯や灯取虫 虚子

月光に燭爽かや灯取虫 蛇笏

灯取虫燭を離れて主客あり 虚子

灯ともせば早そことべり灯取虫 虚子

山風に闇な奪られそ灯取虫 石鼎

幽冥へおつる音あり灯取虫 蛇笏

茂吉>
電燈の 光とどかぬ 宵やみの ひくき空より 蛾はとびて来つ

庭闇へ去るとき白し蛾のつばさ 石鼎

小松山越ゆる火の穂に蛾のこころ 石鼎

二つの燈明さちがふに蛾の心 石鼎

古書の文字生きて這ふかや灯取虫 虚子

威儀の僧扇で払ふ灯取虫 虚子

湯上りの人の機嫌や灯取虫 草城

耽読の眉を掠めぬ灯取虫 草城

見てゐるや眠られぬ夜の灯取虫 草城

気の向かぬ縁談にして灯取虫 草城

終列車送りし駅や火取虫 草城

終電車待つや侘しき灯取虫 播水

灯取虫一種にしておびただし 播水

夜鷹鳴くしづけさに蛾はのぼるなり 秋櫻子

打ち据ゑし火蛾の眼の爛々と 播水

まつしまの駅のともしの火取虫 青邨

金粉をこぼして火蛾やすさまじき たかし

大蛾来て動乱したる灯虫かな 虚子

更けし灯に真白なる蛾ぞ人恋し 石鼎

灯取虫畳の上を掃かれけり 喜舟

蛾のとぶ線落葉松限りなくあをし 波郷

中学生わかし蛾族を花とみぬ 波郷

なんぼたたいてもあけてやらないぞ灯取虫 山頭火

灯取蟲映画に飛んであぢきなや 虚子

自動車のさましたる眼に灯取虫 草城

灯取蟲盃洗の水にこぼれをる 虚子

灯蛾舞ふをしたしみ目守りゐしこころ 悌二郎

カンフルの香に酔ひ壁を墜つる燈蛾 三鬼

蝋燭を這ひ上りゆく火とり虫 草田男

火取虫立正案安国論を読む 茅舎