和歌と俳句

松本たかし

夏まけとかくしがたなくやせにけり

萱草や昨日の花の枯れ添へる

金粉をこぼして火蛾やすさまじき

金魚大鱗夕焼の空の如きあり

柄を立てて吹飛んで来る団扇かな

牡丹の花に暈ある如くなり

くつがへる蓮の葉水を打ちすくひ

橋裏に吸ひ着いてゐる蓮広葉

向日葵の葉の真黒に焦げたるも

影遠く逃げてゐるなる砂日傘

砂日傘小犬がくくりあるばかり

門川の野茨の或は匂ひ来て

行人の背にある蠅や麦の秋

手をば刺す穂麦の中を来りけり

罌栗咲けばまぬがれがたく病にけり

洗髪乾きて月見草ひらく

洗髪乾きて軽し月見草

庭に出て夕餉とるなり月見草

をゆるやかに着て崩れざる

花深く煤の沈める牡丹かな

牡丹の葉を起しつつ開き行く

花に葉に花粉ただよふ牡丹かな