葉牡丹の火むら冷めたる二月かな
早春の牡丹畑を廻りけり
裏山に登れば遅日尚在りぬ
草堤に坐しくづをれて春惜しむ
野蒜掘れば強きにほひや暮の春
ゆく春の牡丹櫻の一木かな
腰かけしまま寝ころびぬ縁の春
春草や光りふくるる鳩の胸
鎌倉に春の雪積む一夜かな
目つむりて春日に面さらしをり
春雷やぽたりぽたりと落椿
屋根屋根の雪消日和の煙出し
古蘆の動くともなし水温む
嫁ぐなる別れの雛にかしづきぬ
仕る手に笛もなし古雛
杓の下小さくかなしや甘茶佛
うかがひて杓さし入れる花御堂
句に入りて歌は忘れつ西行忌
我が椿いたむる雪や実朝忌
踏青や野守の鏡これかとよ
春の灯のつらなる廊下人も来ず
麦踏も庵の眺の一つかな