上州の風ひりひりと野良の梅
朧夜の船の傾きかすかなる
煙れるもさらぬも塩屋うららかに
主客豪春燈の下皿鉢あり
菜の花は濃く土佐人の血は熱く
強き日に燃え落つ椿室戸岬
強東風に群れ飛ぶ荒鵜室戸岬
春潮の底とどろきの淋しさよ
春月を濡らす怒濤や室戸岬
荒磯辺の家の石垣菫咲き
室戸に来更に南の春を恋ふ
紅梅の紅をうるほす雪すこし
見え渡る戸戸の梅咲き野梅咲き
初雷の一くらがりや遊園地
芽ぐまんとする静けさの欅樹下
紅唇に触るる朱盃や濃白酒
処女みな情濃かれと濃白酒
初花や月夜の富士にさしかざし
日は富士に落ちて春月箱根より
沢水は春も澄みつつ山葵生ふ
流れゐる水のきららに山葵咲く
聞くからにささやく水の花山葵
山の日にみどりつめたく山葵生ふ