和歌と俳句

松本たかし

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ゆく水のたえずにごらず山葵生ふ

山葵田の水のさらさら浅き春

死は去りぬ一たび去りぬ青き踏む

再生の双脚ほそく青き踏む

四十五の大病の後青き踏む

病衰の脚震へつつ青き踏む

青き踏む再起の命余念なく

ゆらぎ生ふ藻の隙ありて鮠を釣る

春霜や袋かむれる葱坊主

櫻散りさくら草また卓にちる

花ちるや病後の眼力なく

散らばりし筆紙の中の桜餅

暮遅くとざす御苑の門幾つ

夙く起きて花の露降る朝歩き

まぶし老斑の顔見交して

弟も妹も四十路の起居春夜更く

春眠の深くはなりぬ黄泉現つ

鳥雲に身は老眼の読書生

春惜しし命減らして煙草のむ

老眼や山吹の黄に黄なる蘂

八重ざくら八重やまぶきに黄泉の杖

二つ出て二つ炬燵に春の猫