燕の飛びとどまりし白さかな
山裾に寄せある柴や春の雪
かりそめの菊の根分に小半日
川上へ山吹靡きなびくなり
畦塗るや鍬押当てて住戻り
吹く風に心乱れて春惜しむ
雪を消す雨の降りをり落椿
我が門の蒲公英採られ尽きし春
古蘆に著いてゐる葉の春の風
池に浮く鴨もそぞろや草萌ゆる
篝火に飛び込む雪や白魚舟
叔父の僧姪の舞妓や大石忌
春水の落つるをはさみ二た座敷
蛤を買うて重たや春の月
この雨はつのるなるべし春惜む
行春や風雨の土に花苺
山吹に暮春の風雨強からず
濃山吹墨をすりつつ流し目に
道すがら佳き藤見しと訪れし
椿咲き木瓜咲きやがて百ケ日
雪残る汚れ汚れて石のごと
竹山に残雪沈み見ゆるかな