和歌と俳句

松本たかし

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恋猫やからくれなゐの紐をひき

前山や初音する時はろかなり

空蒼し放たざらめや吾が雲雀

初蝶に見し束の間のかなしさよ

ころがりて又ころがりて田螺かな

一つづつ田螺の影の延びてあり

沸沸と田螺の國の静まらず

二三枚重ねて薄し櫻貝

酒庫の紋それぞれや梅の村

流れ来し椿に添ひて歩みけり

いま一つ椿落ちなば立去らん

また通る彼の女房や藪椿

落椿砕け流るる大雨かな

花人の皆出し園を閉しけり

流れゆく椿を風の押しとどむ

あまたたび雪にいたみし椿咲く

椿落ちて水にひろごる花粉かな

風ふけば流るる椿まはるなり

目白来てゆする椿の玉雫

雪解や現れ並ぶ落椿

大空に莟を張りし辛夷かな

虚子庵に至り坐りぬ花疲

吹雪くる花に諸手をさし伸べぬ

一筋の落花の風の長かりし

卒然と風湧き出でしかな