戀猫や物干竿の丸木橋 子規
おそろしや石垣崩す猫の恋 子規
恋猫や主人は心地例ならず 漱石
内のチヨマが隣のタマを待つ夜かな 子規
金屏を幾所かきさく猫の恋 漱石
のら猫の山寺に来て恋をしつ 漱石
恋猫の眼ばかりに瘠せにけり 漱石
吼えて遠くなりけり猫の恋 鬼城
山国の暗すさまじや猫の恋 石鼎
真向に坐りて見れど猫の恋 漱石
金屏に灯さぬ間あり猫の恋 石鼎
春猫の暮雪に逢うて失せにけり 石鼎
敷石をわたりて失せぬうかれ猫 石鼎
星星をよぶかに猫の恋はげし 石鼎
戀猫のごうごうとして藪の月 石鼎
砂村の月にほむらや猫の恋 石鼎
恋猫の二三疋なる姿かな 橙黄子
うつゝなに泣く児あやすや猫の恋 淡路女
追はれたる恋猫鳴くや塀の外 播水
我が猫をよその垣根に見る日かな 虚子
我が庵をゆるがし落ちぬ猫の恋 虚子
大比叡の表月夜や猫の恋 花蓑
ぬかるみに来て恋猫に見入らるる 鴻村
恋猫やからくれなゐの紐をひき たかし
恋猫をあはれみつつもうとむかな 虚子