和歌と俳句

夏目漱石

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永き日やあくびうつして分れ行く

わかるるや一鳥啼て雲に入る

窓低し菜の花明り夕曇り

山吹の淋しくも家の一つかな

塔五重五階を残し霞みけり

ひたひたと藻草刈るなり春の水

岩を廻る水に浅きを恨む春

散るを急ぎ桜に着んと縫ふ小袖

人に死し鶴に生れて冴返る

ふるひ寄せて白魚崩れん許りなり

落ちさまに虻を伏せたる 椿

貪りて続け様に鳴く

のら猫の山寺に来て恋をしつ

ぶつぶつと大な田螺の不平哉

柳あり江あり南画に似たる吾

或夜夢に雛娶りけり白い酒

姉様に参らす桃の押絵かな

は物の句になり易し古短冊

木瓜咲くや漱石拙を守るべく

春の夜を兼好緇衣に恨みあり

程な小さき人に生れたし

前垂の赤きに包む土筆かな

水の映る藤紫に鯉緋なり

梓彫る春雨多し湖泊堂