落つるなり天に向つて揚雲雀
雨晴れて南山春の雲を吐く
むづからせ給はぬ雛の育ち哉
去年今年大きうなりて帰る雁
一群や北能州へ帰る雁
爪下り海に入日の菜畑哉
里の子の猫加へけり涅槃像
鶯のほうと許りで失せにけり
鶯や雨少し降りて衣紋坂
鶯や田圃の中の赤鳥居
旧道や焼野の匂ひ笠の雨
春日野は牛の糞まで焼てけり
宵々の窓ほのあかし山焼く火
野に山に焼き立てられて雉の声
野を焼くや道標焦る官有地
篠竹の垣を隔てて焼野哉
蝶に思ふいつ振袖で嫁ぐべき
蝶舐る朱硯の水澱みたり
山三里桜に足駄穿きながら
連立て帰うと雁皆去りぬ
鳴く事を鶯思ひ立つ日かな
吾妹子に揺り起されつ春の雨
普化寺に犬逃げ込むや梅の花
虚無僧の敵這入ぬ梅の門
春の雲峰をはなれて流れけり