和歌と俳句

春の川

枕する春の流れやみだれ髪  蕪村

烏帽子着て渡る禰宜あり春の川 漱石

春の川故ある人を背負ひけり 漱石

春の川橋を渡れば柳哉  漱石

錦帯の擬宝珠の数や春の川 漱石

棹さして舟押し出すや春の川 漱石

魚は皆上らんとして春の川 漱石

颯と打つ夜網の音や春の川 漱石

晶子
春の川 のりあひ舟の わかき子が 昨夜の泊の 唄ねたましき

白秋
ゆく水に 赤き日のさし 水ぐるま 春の川瀬に やまずめぐるも

白秋
白き犬 水に飛び入る うつくしさ 鳥鳴く鳥鳴く 春の川瀬に

山の日のきらきら落ちぬ春の川 鬼城

春川の日暮れんとする水嵩かな 鬼城

春川や橋くぐらんとする帆掛舟 鬼城

春川に舟新しき鵜飼かな 鬼城

木戸出るや草山裾の春の川 蛇笏

橋杭に小さき渦や春の川 漱石

筋違に四条の橋や春の川 漱石

木屋丁や三筋になつて春の川 漱石

学童の顔浸し居る春の川 立子

向ふにもあがる四つ手や春の川 風生

ゆるやかにゆるやかに波春の川 立子

裏口を出て来る家鴨春の川 虚子

春の川ゴルフリンクに大曲り 虚子

春川や宇治の仏閣もとよりに 尾崎迷堂

意満ち来れば春川ながれけり 鷹女

布さらす春の川みえ離宮みえ 万太郎

空を率て末ひろがりに春の川 蛇笏

海に入ることを急がず春の川 風生

春の河夜半に大阪ネオン消す 多佳子

かへりみる月日のなかの春の河 汀女

鴨と家鴨争とけて春の川 みどり女