和歌と俳句

如月 きさらぎ

好忠
わぎもこが 衣きさらぎ 風寒み ありしにまさる ここちかもする

定家
かざしをる 道行き人の 袂まで さくらににほふき さらぎのそら

雅経
花のいろは いまだよそにも みねの雲 かさねてさゆる きさらぎの山

はだかにはまだ衣更着のあらし哉 芭蕉

きさらぎや廿四日の月の梅 荷兮

煤ちるやはや如月の台所 白雄

如月や一日誕す海の凪 几董

如月に取つく野辺の景色哉 青蘿

利玄
如月や電車に遠き山の手のからたち垣に三十三才鳴く

晶子
萌野ゆきむらさき野ゆく行人に霰ふるなりきさらぎの春

如月の駕に火を抱く山路かな 虚子

晶子
青色のをしどりの毛の浮きし水なまめかしけれきさらぎの朝

牧水
きさらぎや海にうかびてけむりふく寂しき島のうす霞みせり

晶子
戸に寄りて藁の管より息を吹く童きたりぬきさらぎの春

晶子
桐の木の片側濡れて幹青ききさらぎの雨なつかしきかな